人生の後半

Latexで数学の問題作成、pythonによるコーディングなどなど

超ひも理論とニュートリノ振動

先日、日本物理学会の市民科学講演会に参加した。ノーベル賞の梶田さんの話が無料で聴講できることもあって聴衆は少なくとも500人くらいはいたと思う。前半は橋本幸士先生(大阪大学教授)の「超ひも理論」の講演。橋本さんの話では、日本全国に物理学者は約1万人、そのうち5000人が大阪大学に集結しているが、参加者の大半はTシャツにジーンズというカジュアルな出で立ちである。橋本さん自身もノーネクタイにTシャツというラフな姿で檀上に登壇された。講演では、3次元で我々が観測してる光子の偏光は実は高次元の重力子の振動と同一であるという仮説を紹介された。我々の住む世界が縦横高さの3次元であると考えているのは、人間の勝手な思い込みのようなもので、実際はもっと高い次元から投射される影のようなものが我々の住む世界の実体である。この仮説は天才物理学者マルダセナの論文から導かれる。

幸運にも、最後の質疑応答の時間に質問の機会を与えて頂いた。そこで、決定論を支持するかどうかについて聞いてみた。質問の答えは、私は因果律を信じているが、物理法則が人間の行動のすべてまでを支配しているのかどうかは、自分の興味の対象外ということであった。

後半はニュートリノが質量を持つことを発見した梶田隆章先生(2015年ノーベル賞受賞者)の講演。講演は「すみません、今日私はネクタイをしてきました」という短い挨拶からのスタートであった。この一言はユーモアのセンスがあって私は気に入った。梶田さんの謙虚な人柄のよさも感じた。生の講演を聴講するとその人の人柄が分かるのが面白い。

ニュートリノは毎秒1兆個が体の中を通過しているが、地球全体をすり抜けてしまうほどの電子より小さいサイズのため捉えどころがない。そのため昔はニュートリノは質量がゼロと考えられていた。私の知識では理論的に質量がゼロである粒子は光子(光の粒)のみである。ニュートリノは小さすぎてどれだけ細かい網目にもひっかからない。しかし、スーパーカミオカンデを使うとわずかながら検出することが可能である。スーパーカミオカンデは5万トンの純粋で満たされた巨大な水槽のようなもので、ニュートリノは低い確率で水分子と衝突することがあるため、この方法でニュートリノを検出する。梶田さんはこのニュートリノが別のニュートリノに変化するということを観測により証明し、ニュートリノが質量を持つことを発見された。

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